ソファーにどっぷりと沈む。このまま眠りたいがそんな簡単にはいかないようで、眠気は安寧と暗澹の狭間をゆくように消えてゆく。
今日、食事をした女の子はマダムの所に入ったばかりの子だった。 名も知らない田舎から出てきて、垢ぬけるように日々必死に努力してるような子だった。化粧も髪も光る爪も、どこかちぐはぐだった。 一生懸命さは伝わるので嫌な気分にはならないが、違う意味で気分が悪くなる。
更に年齢を聞いて、ああもう今日は駄目だと思った。客から聞いた情報を聞いて店にそのまま送り返した。

彼女がもし私ではなく、マダムと出逢っていたらあの子のように私に身体をよせたりしてロイさん、ロイさん、と慕ってくれていたのかもしれない。
今よりも華奢で、軍服のような野暮ったい服ではなくドレスやスカート、パンプスを履いていたに違いない。
私のあげた服や宝石を身に纏いながら、他の客の接客をしている。私はそれを横目でみながら酒を舐める。

何百回とした後悔を一旦しはじめると、長い夜になる。

背中を焼いても、彼女は「ありがとうございました」と一言云った。それが救いであり、同時で呪いでもあった。 横目で見るどころか、背中まで預けてしまっている。
それを口にしたことはないが、きっとそんなことを口にしたら何を今更、と何度も聞いた言葉を言うに違いない。
でももしかしたら、いや、でもそれは、何度も何度も繰り返す。
どうにかして、自分の都合の良いように長い夜を越えていく。
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