「おろしたくなる」
「何を言ってるんですか」
「ファスナー」
「はぁ」
「反応薄いな」
「仕事中に馬鹿な事をおっしゃるのですね大佐は、と思っただけです」
「仕事中っていっても、市長の娘さんの婚前パーティー出席だ。それくらい付き合いたまえ。君は私の副官だろう」
「それくらいとは冗談を笑顔で流せ、もしくは可愛らしく反応する、という意味でしょうか」
「いや両方とも違う」
「おろさせませんからね」
「お、よく判ったな」
「判ったも何も」
「期待してるのかい」
「いいえ、まったく」
「つれないなぁ」
「つれてたらとっくに私はリザ・マスタングにでもなってますよ」
「・・・・・・中尉も随分と大胆な」
「つれてたら、の話です」
「ところで中尉」
「なんでしょう」
「おろしていい」
「ふざけないでください」
「あの物陰とか」
「結構です」
「そんなファスナーが付いてる服など」
「みなさん付いてますよ。ほら、あそこの可愛らしいお嬢さんにも」
「10歳も満たない子を脱がす趣味はない。君だからおろしたくなる」
「そもそもファスナーと言っても、10センチ程度でしょう。たったこれだけに欲情する貴方には呆れかえります」
「そのファスナーの下には何が隠れてる」
「後にも先にも貴方以外に見せるつもりはありませんからご安心を」
「だからだよ」
「スイッチの入り方がまったく理解できません」
「だからいいんだろう、男と女は」
「私は貴方のファスナーをおろしたいなんて思ったことはたったの一度もないのですが」
「いいぞ、中尉」
「馬鹿ですか」
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